手元にコロナの抗原検査キットが3つある。
アメリカの入国に求められるコロナの陰性証明書のため購入したものなのだが、キットはアメリカから日本、そしてメキシコへ使われないまま運ばれることになった。
コロナにまつわるドタバタも含めて、経緯を書き残しておこうかと思う。
10月に日本へ行ってきた。元々5月のチケットだったが、関空着のアメリカ便は土曜日のみの運行になっており、出発日のフライトがキャンセルに。仕方がないので半年ほど予定を延期し、10月の土曜日の便を取り直した。国際線の運航スケジュールは8月になってもサイトに記載されずはらはらしたが、最終的にJALのサイトで運航が決まった情報を見てホッとする。
東京で国内線に乗り継ぐチケットはなぜかたくさん売っているのだが、日本上陸後は公共交通機関が利用できないので、国内線の乗り継ぎはできない。この人のように、空港からレンタサイクルで帰るというのは中々冴えたアイデアだなと思うが、家族がいるとそういうわけにもいかない。東京着でレンタカーまたは実家の車で大阪まで向かうことも考えたが、大阪に実家がある場合は、関空便がやはり現実的な答えになる。
3か国に入国。必要な検査は
予定が確定したら、求められるコロナ検査の手はずを確認する。
トランジットのアメリカを含め、入国はアメリカ、日本、メキシコとなる。
アメリカは11月からワクチン接種済でないと入国できなくなったが、10月はまだ陰性証明書のみで入国ができた。アメリカは何でもかんでもPCRという感じではなく、簡易抗原検査でもOKのようだ。3日前の数え方の方法や、証明書の有効性は航空会社のカウンターチェックにして、そのスタッフがわかる言語で書かれていればOKという運用ルールなど、全体としては合理性がある感じを受ける。
日本は出発72時間以内の検査で、「原則的」に日本政府指定の書式で記載された陰性証明書が必要だ。簡易抗原検査(Rapid antigen test)は認められない。さらに、空港でも改めて検査がある。
10月からワクチン接種証明の提示で待機期間が10日に短縮となり、ニュースでも期間短縮と書かれていたが、そもそもメキシコは接種証明が有効な国リストに入っておらず、使えない。私はアストラゼネカを2回接種して14日以上経過しているのだが、意味がないのは悲しい。どうも外交の相互承認のような形で、相手国が入国時にその国の証明書を認めているかが基準のようだ。
メキシコの入国は全く通常通りで、陰性証明もいらないし、ワクチンを接種しているかどうかも関係ない。一応Webサイトで簡単な質問に答えてQRコードを発行してもらう必要があることになっているが、入国時にこれを確認されることもなかった。
ヨーロッパと異なり街中でのマスクの着用率は高いが、国境の出入りに目くじらを立てても仕方がないというのは全体的なコンセンサスのようで、感染者数も減るときは減るし、増えるときは増えるといった感じだ。経済的な打撃は大きかった分、自粛警察みたいな圧があまりないので、これはこれで一つの解なんだろうなという気がする。
ということで、日本とアメリカの入国は同じ検査で済ませ、帰りのアメリカ入国に必要な検査をもう一度、あとは日本の空港で入国時に検査があるので、1か月に計3回の検査をすることになる。
メキシコでのアメリカ・日本向け検査
メキシコの社会インフラはアメリカの影響が強いので、コロナの検査も主力は病院ではなく、ラボと呼ばれる検査専門の業者が多い。薬局やウォルマートなどのスーパーでも簡易抗原検査はやっていて、2-3000円も出せば、簡単な英語も併記された陰性証明書はもらえそうだ。
日本入国時は、実はPCR検査だけでなく抗原検査もOKなのだが、定量抗原検査が必要とのことで、一般的な検査はほぼ全て定性抗原検査になり、要件を満たさない。
日本入国時に必要とされる検査は、シンガポールや中国のように病院が国から指定されているところまではいかないが、それぞれの国にある日本大使館は、検査及び書式に記入してくれる病院・ラボのリストを作っているようなので、それに当たるのがまず早道のようだ。
シェアサイクルの人はオーストリアで大使館リストから比較的安めの検査を見つけているが、メキシコの日本大使館のリストはあっさりした感じになっている。記載のリストの、メキシコシティおよびメキシコ州にある病院の中で唯一、定量抗原検査をやっていると書かれている病院のHospital Vivo Aztecaに行って確認したが、うちは定性検査だよと言われ、最安のオプションはあっという間に消えた。
ここは日本でないので、時間が限られているとき、何かのリストに頼って事前に確認しないと大変なことになる。頼みの綱の日本大使館ですら、病院の所在地の州を間違えて記載している。まあ会社の経費が使える駐在員とその家族向けに、高額で確実なところからリスト化したという感じなのだろう。
いくつかネットで検索して、定量抗原検査は諦めた。PCR検査に絞るとSalud Dignaが安いのだが、結果判明までにかなり時間がかかるようなのでパスして、Rapid PCRが1,249ペソ(6,900円)だったので、ここに当たることにした。電話番号の記載もなく、Whatsappで聞けということで、日本のフォーマットを送ったりして確認したが、特に問題なさそうな口ぶりだった。結果判明は大体24時間くらい、とのこと。
一応他のオプションとして、ラボの看板で検査をしているところにも聞いてみたが、日本のフォーマットに記載するのは問題ないよ、という返事。メキシコは紙に署名する程度のことは敷居が低いらしい。日本のように、常に証明書発行代を別に取るということはないようだ。
ところで、日本の条件で面白いのは、医者が該当のフォーマットにサインすればよいとなっている点で、サンフランシスコ領事館のサイトに記載があるのだが、検査と証明書の発行機関が同じである必要性がない。
これだと、例えば自治体がやっているような無料PCRテストを受けた後、その結果用紙を見て、国内の医者が書式に記載することで、証明書ができることになる。
妻の親戚に何人か医者がいるので、この方法を試そうかと思ったが、まあさすがにそれは最終手段にしておくことにした。
なお今回の旅程では、日本向けの証明書はアメリカの要件も満たさなくてはならないのだが、アメリカの要件は常識的な範囲内という感じで、ちょっと面倒だなと思うのは、証明書に複数の人定情報を記載すること、という点くらいだ。名前の他にもう一つ、生年月日かパスポート番号があれば認めるよ、とのこと。言語は何語でもよく、航空会社のスタッフが読めればよい。日本だと日本語、メキシコならスペイン語だけでもOKとなるだろう。
あとは検査日とテストの種類、陽性か陰性か、検査機関名というくらいなので、これは普通どこの場所でも書いてくれるだろう。実は日本の医療機関以外の格安検査の結果報告書でも概ねこの条件を満たすのだが、複数の人定情報だけが足りないケースが多い。この点は、木下とか、なんとかPCRセンターは少し頑張って改善してほしい。
検査自体はあっさりしたもので、メキシコシティ近郊の山道の途中にある、ドライブスルー方式の検査場へ車で行って、それぞれ鼻の奥の粘液と唾液を採取して終わり。3人で30分もかからない程度だ。日本のフォーマットに名前やパスポート番号を記載したものをデータで送っておいたので、結果はPDFでラボのフォーマットのものと、日本のフォーマットがPDFで送られてきた。朝9時ごろに会場へ行き、翌日の朝3時ごろにメールが来ていた。
American航空やJALでアメリカに入国する場合は、VeriFLYというアプリで事前に陰性証明書をアップロードしておき、承認された画面をチェックインカウンターで提示すれば、話が早くなる。深夜の5時にアップロードしたら、1時間もたたずに承認されていた。
日本入国時の検査
そして、日本入国時の空港での検査。運転免許証の更新のような感じの流れ作業で、順番に指定された箇所に書類を持って移動していく。そのプロセスが必要なのかはさておいて、こういう工場の作業フローみたいなものを日本人に作らせると、妙に効率的な感じになる。事前のWebサイト入力でQRコードを入手しておくと少し早い。
出発国によりホテル待機が必須かどうかなどの条件別に、色違いのストラップを渡されて区別されるようだ。テスト自体は、唾液を使った定量抗原検査と思われる。どうしてもPCR検査は増幅の作業が入って、結果判別に時間がかかるので避けているのだろう。
最初の書類確認で、メキシコの陰性証明書の病院印が適当な感じだったので少しひやひやしたが、チェックはどちらかというと名前の綴りやパスポート番号、生年月日の一致を厳しく見ている感じで、病院のサインに関しては特に言われることはなかった。
アプリの設定では、私が中国の人から英語で説明を受け、横のメキシコ人の妻は日本語で説明を受けるという謎の状況だったが、まあ無事にクリアし、大体着陸から2-3時間で解放される。長く歩かされた子供はすこし疲れた顔をしていた。
アメリカ入国向けの検査
最後は日本で受けるアメリカ入国向け検査だ。
日本では海外渡航向けのコロナ検査はPCRが主流で、抗原検査はあまり人気がないようだ。格安のPCRセンターもそこそこあるようだが、海外渡航の場合は別の高い提携病院を案内する始末で、どこも全体的に高い。また、検査代の他に書類の作成費用がかかるケースが多い。
いくつかの格安PCRセンターは、オンラインでの医者面談を取り入れているところもあるが、それでもPCRに加えて面談に書類発行となると、そんなに安いところは見つからない。東京だとここが陰性証明書の発行代を含めて1万円以下のようだが、2か月前から予約がいっぱいのようだ。
先に書いた通り、アメリカのヘルスケアシステムはこういう検査を病院だけでやるような発想はなく、別にラボでもWalmartでも何の問題もないし、そもそも政策立案者がそういうイメージで施策を決めている気がするので、検査と書類で3万円になるような状況はきっと想定していないのだろう。しかしこれが日本だと、自由診療で病院へ行けという扱いになって、利益の乗せられ方が医療と同様の扱いになってしまう。
書類も、厳密性が大好きな日本なので、メキシコのようにフォーマットにサインするくらいはやるよ、というラフな感じではなく、結構高額な書類作成代がかかる。格安のPCRセンターもいくつか見たが、要は医療行為ができないので、診断書ではなく結果報告書だと強弁するとか、しかもフォーマットは絶対変えられない、というようなところがほとんどで、まあ順法的にやろうとすると、みんな(じゃなくて経費で落とせない人、か)が不幸になるようだ。
病院の見つけ方だが、日本では「ビジネス渡航者向け」と銘打ったシステムがあり、国を選ぶと、条件を満たす検査をする病院をリストアップしてくれる。経産省がやっているらしく、省庁の縄張り争い感がすごいが、一般旅行者にも一応開放するよ、とのことなので、使ってみた。
アメリカは先に述べたように抗原検査でよく、原価的にも、検査の所要時間的にも、検査の性質的にも(疑陽性が多く出るPCRよりも、取りこぼす抗原検査の方が旅行者の目的には合うだろう)メリットが高い。
大阪周辺で探すと、鶴見にある医者が6,600円で抗原検査のメニューがあり、電話で聞くと、前日までに予約、英文の診断書は別途4,000円ということで、合計10,600円とのこと。その他はここで13,000円というところもあった。
アメリカ入国のみに使える格安オンラインキット
なお、アメリカに入国する場合は、少し裏技に近い感じだが、ここの記事にあるeMedのオンライン診療キットを使う方法がある。
日本の医者の場合は3名分で計31,800円のところ、このキットであれば3名分が$99で買える。いつもの転送業者をかましても$160くらいとなり、まあ1万円ほど安くなるかなということで、アメリカで発注しておいた。尚、このキットは有効期限があって、手元に届くときに1か月とか2か月の猶予しかないケースもあるが、3か月の期限延長をFDAが認めているとのこと。
テスト時には英語でビデオ電話をしなくてはならないが、スペイン語にも対応しているようなので、妻と子供は問題なさそうだ。こういう時、アメリカの実質的な第二言語になるスペイン語は強い。
キットは週末をはさみ3日でオレゴンの倉庫に入り、DHLで日本に転送したのだが、航空便貨物が飽和しているようで、通常その日にトランジットになるシアトルで1日、LAでも1日余計にかかり、日本に入ってくるのが遅れた。嫌な予感は続き、抗原検査キットは医薬品扱いになるので、通関させることができないという電話がDHLからかかってきた。
通関はできまへんけども、まあ今回は特別に、荷物はアメリカに無料で送り返せるか確認しときますわ・・(関西弁)、というステータスで、通関前に保留となってしまったようなので、この時点でもう配達予定日が出発日を過ぎてしまい、キットを使うことができないことが判明してしまったので、医者の予約を取った。
結局キットは無駄になり、検査代含めて5万円の出費ということになってしまい、もうミャンマーで両替詐欺にあったのと同じようなショックを受けたが、飛行機に乗れなくなるのもこれまた大惨事なので、次善の策をとるしかない。
その後、薬事法関連を調べてみたところ、個人輸入で一定の範囲の量なら通関は通るようだ。管轄の近畿厚生局の薬事監視指導課へ電話して聞いてみたが、まあその量だったら通関に出して、問題があれば通関からうちに連絡が来るけど、特に「薬監証明・輸入確認証」は必要ないと思うよ、業者が通関を止めるのは変だねえ・・というような反応で、DHLはちょっと過剰反応のような気がする。
基本的に個人輸入はその本人が使うもの、という扱いらしいので、家族3名分を同一の宛名で送るのではなく、それぞれ別送してくださいと言われ、そういうものなのかとも思ったが、税関も今回の荷物を止めるというのはあまり現実的ではないようだった。
DHLのコールセンターに改めて電話して聞いた話を伝えると、最終的には通関してもらえることになったらしく、翌日にはトラッキングで通関許可が表示され、最終的に出発日の10時ごろに、ちょうど自分と行き違いになる感じで配達された。東京23区の感覚でDHLの自社配達に慣れていたが、大阪近郊は佐川に引き渡しのようで、これも1日余計にかかるのだった。
これが実家にあっても仕方ないので、家に置き忘れた人形と共にEMSで今度はメキシコあてに送ってもらう。そんなこんなで手元にテストキットが届いた。
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なんだか無駄に長くなった。
単に行って帰ってくるだけでも、各国のシステムや医療事情などが垣間見ることができて興味深かったが、またやりたいかというとそれは別の話なので、早いところコロナは収まってほしいところだ。