最近、北米線だけなぜ航空券が高いのか

メキシコから日本へのフライトを常にウォッチしていると、コロナ前に比べて、航空券が高いのは当然という感覚になっているのが腹立たしい。


北米からの航空券が、少なくともドルベースでは概ね価格が戻りつつある一方で、北米から日中韓の北東アジア、タイやシンガポールといった東南アジア方面は、高止まりが続いている。

ここに全世界の国際線と国内線を合わせた座席数の供給グラフがあるが、数値で見ると、供給量は概ね2019年の水準にほぼ並ぶところまで戻ってきている。

それぞれの大陸域内でも、ヨーロッパの8月は2019年比で96.6%まで回復し、中南米は6月にコロナ前を1.8%上回る旅客数となった。各国の国内線では4月の2019年比でインドが14.7%増、アメリカが3.3%増。中国は来年の春までの計画で、国内線の運行便数は2019年を34%も上回ることになる見込みだという。

 

一方、東南アジア、北東アジアの域内の供給量は相変わらず-21%、-26%となっているが、要因は中国だろう。

中国の国際需要は概ねコロナ前の50%程度の回復となっているが、さらに細かく見ると、シンガポール、韓国など、元々需要が高かったところの回復が先行しているので、今後はそんなに心配はいらない気がする。

上のサイトからグラフを引用。

 

ただし、回復が大きく遅れているのが中国とアメリカを結ぶ路線だ。便数でなんとコロナ前から86%減の、14%に留まっている。以前は週340便あったのが、現在でも48便しか飛んでいない。11月からやっと70便に増えるが、それでも以前の20%程度という水準にしか戻らない。

そんなわけで、アジアと北米を結ぶ路線は、プライスリーダーだった中国系キャリアによる競争がほぼ消えて供給不足が続き、完全に疑似カルテル価格になってしまっている。コロナ以前に日本から北米に行く場合は、最安値が中国系キャリアの経由便で占められていたが、今はなんと日系のZipAirが一番安いという体たらくだ。

 

ではなぜ便数が増えないかというと、アメリカ当局が中国系キャリアの増便を認めないからだ。
中国側のコロナ規制による運行制限が一方的で相互協定に反したからだというのが理由らしい。また、中国系の航空会社はシベリア上空を飛べるが、米系はロシアを迂回して飛ぶため、余計な燃料と時間がかかることにも不満らしく、小刻みにしか便が増えない。

とはいえ、このデッドロックが両国の政治的な対立のみに起因しているとも言い切れない。
この10年で、アメリカと中国の航空会社のマーケットシェアは完全に逆転した。両国の直行便におけるシェアは、2010年では米系が61%だったが、2019年には33%にまで下がっている。
最終的に便数が戻れば、コロナ以前のように中国キャリアがプライスリーダーになることは間違いないため、アメリカの航空会社は一気に便数を戻すことに後ろ向きだ。現状のカルテル価格の方にメリットがあるのだろう。このビジネス上の判断も、アメリカの当局の姿勢につながっている。

米中直行便の各航空会社シェア、2019年と2010年

 

アジアからヨーロッパ方面もロシア上空が飛べないのは同じなのに、中国ーイギリスやイタリアの路線はコロナ以前の便数とほぼ肩を並べるか、上回るところまで来ているとのこと。それに比べ、アメリカはなんと面倒臭いことか。

 

格安の航空券を必要としていて、中国系の経由便を好んで使ってきた私のような人間にとっては、とんだとばっちりのような気がしてならないのだが、まあ来年も引き続き太平洋路線は厳しそうだ。