代償行為としてのアメリカ行き

アメリカに行ってきた。
そして、帰ってきてからのコロナの隔離期間は10日ほどになる。今回は無事のようだ。

 

元々は今年の5月に行く予定で、コロナで1度航空券の予定変更をしていた。変更した当時は、12月ならおさまっているだろうと思っていたのだが、まったく甘かった。冬の入り口になり、アメリカのとてつもない悪化ぶりに中止も考えたが、もう航空券の無料変更はできないことになっていたので、予定通り行くことにした。

家族を嫁の実家に送り、帰ってきたら自主隔離ということで話をつけ、メキシコから出国する前の儀式である、ポソレをいつものように食べて、空港へ向かう。

 

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海外にいると、時々日本に戻りたくなるものだが、家族で何十万もするチケットをそうそう買うわけにもいかないので、なぜ戻りたいかを因数分解し、その個別の欲望をコストがかからない方法で解消するのが、全体的なコスト削減につながる。

牛丼、寿司、ラーメン、餃子、カレーといったものは大体こちらでも不自由しないが、家系のラーメンとか、吉野家の牛丼が食いたいとか、そういうディテールにまでなってしまうと、お手上げになる。
あとは常々言っている、メキシコのデジタルガジェット類の高さで、個人輸入でも30%くらいの税金がかかるので、時々アメリカに行って、まとめて買っておいた方がよい。

 

こういう欲が解消できそうなところは、アメリカだと西海岸のロサンゼルスかサンフランシスコ、テキサスのダラス、あとはニューヨークあたりになる。このあたりは、大きめの日系スーパーとかドンキの店があり、食べ物も選択肢が多い。

まあアジアの上海や香港、シンガポールあたりも、日本に戻らなくてもいいなと思うくらいの感じで、且つなぜか航空券が日本往復より安いのでそちらに行く手もあるが、今はトランジットもしにくいので、なかなか現実的でもない。

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Yoshinoya USA

メキシコからだと、アメリカの各都市にLCCが飛んでいるので、これを使うのが手っ取り早い。選択肢は、冬のNYとか、観光需要の多いラスベガスの閑散期、便数が多いロサンゼルス、距離的にも近いテキサスという感じで、このあたりは片道が100ドル以下で見つかるが、もっと安いのが国内線でアメリカの隣接都市に飛ぶ方法で、ティファナ(サンディエゴ)か、シウダー・ファレス(エルパソ)へ行くと、往復で100ドル以下で飛べる。
LCCの底値は空港税とか出入国税なので、メキシコとアメリカでそれぞれ国際線として税金を払うと、大体50ドルくらいが消えているはずだ。今回メキシコシティからロサンゼルスまで68ドルというチケットだったが、航空会社の収入としては、10ドルとか20ドルということになる気がする。

 

あとは現地の空港アクセスとかも総額に影響する。陸路でアメリカに入る場合、ESTAを持っていても、I-94という申請をしなくてはならず、これが6ドルかかる。また、これは必須ではないが、ティファナの空港からサンディエゴに直接入るCBXという橋があり、片道16ドル取られる。

そして、宿と交通のインフラ。アメリカの大都市は宿が高い。ロサンゼルスは目的地が郊外に散らばり、車がないと効率的に回りきれないので、レンタカー代の上、宿も高いという二重苦になる。テキサスはホテルがそこまで高くないが、公共交通は不便で、Uberあたりに頼ることになる。NYやシカゴだと、アジアの大都市のように、何でもない郊外の駅の近くに泊まるという方法で宿代を抑えられる。サンディエゴやエルパソだと、メキシコ側に宿をとればよい。

また、買い物をする予定の場合、税金が州によっていろいろと変わるので、少し頭に置いておくとよい。アメリカは基本的に免税制度がなく、消費税を払わなくてはならないが、テキサスは旅行者向けに免税制度があるし、オレゴンは州税がかからない。一方、カリフォルニアは消費税の他、ホテル税など全体的に高い。

 

という感じのどうでもいい知識を、身をもって体験しに行くというのが今回の目的だ。
意味もなく国境というものにロマンを感じてしまうので、シウダー・ファレス往復でもともと考えていたのだが、3月以降、旅行者はアメリカへの陸路入国が禁止になってしまい、毎月これが更新されているので、ロサンゼルスに入ってエルパソへ向かい、メキシコに入国して帰ることにした。

 

 

メキシコからアメリカへの空路入国は、日本からと同様に基本的に制限がなく、メキシコも帰ったら14日の自宅待機などという制限もないので、行きたければ行ける。飛行機も特に運休することもなく飛んでいる。
メキシコシティからロサンゼルスの飛行機は満席だった。

アメリカはそれぞれ国、州、郡、市によってそれぞれコロナ対策の規制があり、ややこしい。カリフォルニア州は州外からの入域に14日間の自主隔離(州外に出るトランジット客は関係ない)を推奨、ロサンゼルス郡はレストランの閉鎖や夜間外出禁止令、ロサンゼルス市は来訪者にオンラインフォームの記載を義務付け、という風に、それぞれ主体が微妙に違う。

全体的によく言われるように、民主党系の州や都市が厳しく共和党系の州が緩いようで、カリフォルニアは全体として色々とピリピリしている感じだったが、テキサスは州としての規制をあまり聞かなかった。ただ、エルパソでは日曜日にコロナの関係で市バスが完全にストップしていて、市のバスセンターに行ったら、誰も人がいない。今日はバスがねえよと言われたので、Uberを呼ぶしかなかった。

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El Pasoの街並み。奥がCiudad Juarezで、赤いXのアーチが見える


ロサンゼルスには昔から有名なリトル東京があるが、郊外の辺にリトル大阪というのもあるらしい。近くの日系スーパーで、カリフォルニア米はロサンゼルスだとどのくらいで売っているんだろうと思って見てみたが、こっちで20ドルくらいのものが、14ドルくらいだった。あとは、全農が輸出している日本産の米も結構安いようだ。ダイソーとか、紀伊国屋書店なんかもある。

ラーメンのテイクアウトを公園で食べ、スーパーのパック寿司を買って空港で食べ、値下げシールのサンドイッチをウォルマートで買うなど、ろくでもない食事ばかりだったが、まあ満足した。

 

ロサンゼルスでレンタカーを借りるのは2回目だが、街中を走ったのは今回が初めてで、ウエスト・ハリウッドのあたりの邸宅を眺めながらのドライブは悪くなかった。私が最初に西海岸に行ったのは、NewBeatleが出たてのころで、メタリックブルーの車体が強い日差しによく似合っていたのを覚えているが、今回はFIAT500eが結構目立った。Teslaも含めて、みんな普通にEVに乗るんだなあ、と思う。

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そして、今はAndroid autoかApple Carplayの時代なので、Google Mapsのオフライン地図をダウンロードしておき、USBケーブルを刺せば、ナビはいつも通り。楽になったもんだなと思う。

メキシコで日々クルマを運転すると、なかなかマナーに疲れることも多いが、カリフォルニアはきっちり譲るし、よいマナーなのに毎回感心させられる。日本やメキシコでは、軽とかAセグメントくらいの小型車をよく見るが、カリフォルニアはセダンが最低という感じで、合理的に速く走る仕組みが整っているので、赤信号からのスタートで出遅れないように、そのくらいの馬力の車でないとつらい感じだ。まあそれでも、クルマ中心の街づくりは違和感も多い。


全体的にアメリカは物価が高いが、コンビニで20ozのコーラを買うと3ドルとかになるのは、ちょっとひどすぎるんじゃないかと思う。メキシコに戻って、移民局の向かいの自販機で600mlのコーラが15ペソ(まあこれでもメキシコでは高い方だが)で、ああ戻ってきた、と妙に安心してしまった。

アメリカの国境は例にもれず出国時のチェックは全くないので、ダウンタウンの橋に行って、50セントまたは10ペソを払い、歩いて渡るだけだ。メキシコ側では、在留ビザがある人やメキシコに滞在する人は、ここの移民局へ行って、入国カードを書いて出せばいいようだ。

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Santa Fe Bridgeをアメリカ側から望む

シウダー・ファレスは一時期治安で悪名をとどろかせたが、行ってみたらまあ普通のメキシコの街という感じだった。市内はバスのBRTがあるので、国境の橋のあたりから、サラコザ/Tecnologicoと呼ばれる巨大ショッピングセンターが集まるところへ行って、あとは空港まで30分くらい歩けばいい。そんな距離を歩きたくないというなら別のバスもあるし、メキシコのUberやDiDiは、アメリカと違いそんなに値段を気にしなくてもよい。


メキシコシティではあまりブリトーを食べなくて、ファミリーレストランに行っても、ブリトー・ノルテーニョなどと言って、北の食べ物であることを強調しているのだが、ここでは朝から開いているブリトー屋がたくさんあって、ああ、聞いた通りだなと思ったくらいしか、シウダー・ファレスには滞在していない。
あと、メキシコは人種的にヨーロッパ系と先住民の混血で、息子もオハアカの血を引いていたりするのだが、南の方が比較的肌の色が浅黒くなるのに比べ、北の方の人たちはわりに白く、異なる混ざり方も感じる。

帰りの国内線は、6割くらいの混雑率で、横に人がいないとホッとする。2時間半ほどのフライトで、メキシコシティに着いた。