迷い込んだ気分になった町

カンクンなどユカタン半島にある観光地は、ビーチを目指してカナダとかアメリカ、ヨーロッパから大量に人が来るのだが、パッケージには大体オマケのようにマヤ文明の遺跡ツアーが付いてくる。

ビーチのオールインクルーシブで呆けているだけでは充実した休暇にならないし、かといって、遺跡をくそ暑い中巡り続けるだけというのは(一部の人を除いて)メインの休暇になりえない訳で、現代人の求める「ホリデー」には偽善的な教養主義と冒険主義が一部含まれるべきだというのは、たいていの場合仕方がないものらしい。

そんな訳でカンクンに行くことをずっと拒んでいたのだが(まあ宿が高いのが一番の理由だ)、メリダの便が往復5,000円ほどで買えたので、セレストゥンというビーチの街に行って、1日はマヤのピラミッドでも見るか、という感じで出かけた。

 

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セレストゥンはカンクンのような巨大な国際リゾートではなく、フィリピンのプエルトガレラのような、自国民と物好きな先進国民向けのリゾート地という感じで、海岸にそこそこの民宿がゾロゾロあるようなところだ。近くに塩湖があって、そこでフラミンゴの群れが見られる。マングローブの森をボートで抜けて見に行くのが定番のようだった。

フラミンゴは西アフリカ・モーリタニアの海岸で見たしなあ、と思いながらも、なかなかの眺めだった。

ピラミッドのUxmalは近いといっても車で150kmくらい走る。まあ運転する分にはそれなりに楽しいのだが、子供にとっては単なる退屈な時間になる。ユカタン半島の道は形容しにくいが、そこまで密ではないジャングルを切り開いて一直線に通した高速道路をひたすら走るような感じだ。

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高速を行って帰ってくるのもなあということで、10kmくらいに一度くらい現れるちょっとした町を結ぶ、ショートカットの地元道を通ることにした。このあたりの町は、石を疎にくみ上げて塀にしている家が多く、沖縄の伊是名で見た組み方とよく似ているなあと思いながら通り過ぎる。

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沖縄・伊是名島

とはいえ、たいていの家自体はよくあるメキシコの家の感じで、レンガとしっくいで立方体の平凡な感じなのだが、高速に合流する最後の町だけが少し印象が違い、茅葺屋根の家が多く、一瞬不思議な場所に迷い込んだような感覚を受けた。茅葺に白い石の塀の町。


帰ってから調べると、Kinchilという町で、どうやら町の方針でこの茅葺の保存に務めているらしい。Google Mapsストリートビューで今は何でも見られる。屋根はPalma de guano、グァノ椰子の葉を使って葺くらしい。典型的なマヤの家は、茅葺と石灰岩の石で作るとのこと。

アメリカの大学のサイトで、このあたりの民俗をまとめたフォトギャラリーがあった。一枚拝借。

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半数くらいの家に下水設備がないのに、茅葺屋根の保存が先なのか?という記事もあるが、正直マヤの世界遺産ピラミッドよりも、こういう家々と町を見ることの方がよっぽど強い印象に残っているので、保存はぜひ続けていってもらいたいと思う。