トルティーヤの値上がり

メキシコの主食、トルティーヤがどんどん値上がりしている。3月の統計では、年率6.15%の上昇となったらしく、これはインフレ率を上回る。

自分の周りでは、キロ当たり12-15ペソくらいで売っているが、この間通りがかった店では、値段を含めて作った看板に12ペソと書いてあったものの、横に手書きで .99 と付け加えて12.99ペソに値上げして、なんとか看板をそのまま使おうとするなど、色々と涙ぐましい努力が見られる。
年間でガス代が36%、トウモロコシの粉が31%の値上がりとのことで、引き続き値上げ基調は続きそうだ。

 

この10年とか20年、世界を旅行していても、中国の驚異的な貧困脱出を含め、中間層が育ってきている感覚はあったが、今回のコロナで中間所得層が大きなダメージを受けているという話がある。英語版の記事は日本語版より長くて、各国のルポがブルームバーグに出ていたが、中間層から転落したと推計されるうちの60%はインドで、エンジニアや教師など、給与所得者の職が大きく減少したとのこと。

ブラジルでは、食料品や日用品が通貨レアル安に伴い値上がりし、牛肉から、より安い鶏や卵へと消費が移っている。南アフリカでは、初めて一人暮らしをするような層が好む、安めの家賃の家の空室率がどんどん上昇し、家族層の家などと比べて悪化がひどいなど、新興国の中間層の苦境が浮彫りになっている。

 

そんな中、一時期売り込まれていたメキシコペソが最近少し戻しているな、という気がしていたら、理由を解説する記事が出ていた。メキシコ経済は、しばしばもう一つの中南米の大国、ブラジルとの比較で語られることが多いが、この記事もそんな文脈で語られている。

メキシコは本当にコロナ対策で金を使いたがらないな、というのが肌感でもあったのだが、IMFのデータでは、ブラジルは国内総生産(GDP)比8.6%の追加支出を行ったのに対し、メキシコでは0.6%しか支出を増やさなかったらしい。

これでは通貨が上がっても、国民にとっては正直複雑な感じだろうが、ブラジルの方が財政不均衡(要するに支出が収入より大きい)で、経済はメキシコの方が輸出依存型になっている(巨大市場のアメリカ様が隣なので)という違いがあり、ブラジルは先に金利を上げざるを得ない。まあどちらもリスク通貨で、似たり寄ったりのところがあり、通貨安が物価高につながりやすいが、ブラジルの物価高が目立ってきているようだ。

 

そんなようなことを中国人と話していたら、まあ確かに中国はうまくやれていて、中間層への影響もそれほど大きくないが、そもそも若者の生きにくさは半端ない、日本、韓国も含めた北東アジアの宿痾というか、若者が犠牲にされる経済であることは間違いないからねえ、というような反応があって、それはそれでまた難しい感じだよなあとしみじみ思う。