コルカタとダッカ

(こちらから続きます)

さて、今回は山の中を陸路で駆け抜けてきたのだが、私は本来大都市が好きだ。
旅行の中で境界を眺めようとすると、大都市以外まで行かなくてはならないこともあるが、都会の躍動感とか中間層を観察するというのが昔から私のテーマで、最近だと地下鉄、スマホ決済、ショッピングモールあたりが三種の神器かなと思う。


今回はそういう意味で言うと、インドのコルカタと、バングラデシュのダッカが大都会だった。どちらも地下鉄があり、インドはUPI、バングラデシュはBKashというQR決済のバーコードがどこでもある。ショッピングモールも大規模で綺麗なものが揃っている。


ダッカメトロは最近の開通だ。鉄道マニア的に言うとA-trainの日本式車両とシステムで、駅にはJICAのプレートが至る所に貼られている。オールドダッカを観光したら、冷房の効いた車内に逃げ込んで、駅前のショッピングモールのフードコートでチキンバーガーを食べて、メトロで戻るというようなことができるようになった。
インドの大都市で常に悩みの種だった空港から市街地へのアクセスも、メトロが空港と直結するようになり、大幅に改善された。旅行者がインドに入るのはデリー、ムンバイ、コルカタあたりだろうが、今やどこも空港に駅がある。
ちなみにこのあとはバンガルール、チェンナイ、ハイデラバードと都市ランキングが続くらしいのだが、チェンナイは既に開通、残りも計画中か建設中のようだ。ただ、この辺はまあ特定の産業の人が出張で行くようなイメージの気がする。

インド・コルカタ地下鉄の空港駅

渋滞や酷暑を避けられるという意味で、実にありがたいメトロ。私は旅行者として、また中国の利便性向上などを見てきた感覚から、比較的メトロ至上主義者なので、住んでいたメキシコシティがメトロからBRTシステムへ整備の重点を移していることになんとも割り切れない思いを抱いたりしていた。ただ、一律にどの都市でもメトロが解決策、とはならないことも確かだろう。
ちょうど旅行中にGoogleがリコメンドしてきた2つの記事が、その辺りをうまくまとめている。AIにまとめてもらった。

The Daily Star Dhaka's metro rail: Mass transit solution or missed opportunity? ダッカのメトロ:大量輸送の解決策か、それとも失われた機会か?

  • ダッカ交通の新時代と現状

    • ダッカ初のメトロ(MRT Line-6)の開通は、慢性的な渋滞に悩む市民にとって革新的な変化をもたらし、特に女性や学生にとって安全で予測可能な移動手段となった。

    • しかし、これが「都市全体の交通問題を解決する決定打」になっているかについては疑問が呈されている。

  • 世界で最も「高額」な鉄道建設

    • ダッカMRT 6号線の建設費は、1kmあたり約2億3,400万ドルに達する。これはインドの各都市や、ベトナム、さらには先進国と比較しても極めて高額であり、その膨大な対外債務(主に円借款)が国の財政を圧迫するリスクがある。

  • ターゲット層のミスマッチ(格差の露呈)

    • メトロの主な利用者は、元々UberやPathao(ライドシェア)、自家用車を利用していた層が中心。

    • 一方で、ダッカの交通弱者である低所得層や工場労働者にとっては、バスの約2倍という運賃設定が壁となり、結局「地獄の渋滞」のなかでバスを待ち続けるしかないという、移動手段の二極化(階層化)を招いている。

  • 「渋滞解消」への限定的な効果

    • メトロの運行で特定のルートの移動は劇的に速くなったが、地上では依然としてカオスな渋滞が続いている。これは、バス路線の整理や自家用車の流入規制が全く手付かずのままであるため。

  • 「点」から「面」への統合の失敗

    • 地下鉄駅が「孤島」のようになっており、駅から目的地までの歩道が整備されていない。車椅子での利用や、雨天時のアクセスが考慮されておらず、結局駅までリキシャやバイクを使わざるを得ない非効率さが残っている。

  • 「失われた機会」の正体

    • メトロという輝かしいハードウェアを手に入れた一方で、最も安価で効率的なはずの「バス路線の近代化」や「歩行者中心の街づくり」という、より広範囲に利益をもたらすはずのソフト面での改革が置き去りにされたと批判されている。

 

BBC News India has splurged billions on metro trains. But where are the commuters? インドは地下鉄に数十億ドルを投じたが、通勤客はどこにいるのか?

  • 巨額投資と期待外れの利用者数

    • インド政府は過去20年間で約260億ドル(約4兆円)を投じ、約20都市で計900km以上の地下鉄網を整備した。

    • しかし、デリーを除くほとんどの都市で、実際の利用者数は事前の予測を大幅に下回っている。

  • ムンバイの事例(アクアライン)

    • 昨年開通したムンバイの地下鉄3号線(アクアライン)は、1日150万人の利用が見込まれていたが、実際にはその10分の1程度にとどまっている。

  • 利用者数が伸び悩む主な理由

    • 運賃の高さ: 既存の近郊鉄道(スバーバン・レール)やバスに比べて運賃が高く、低所得層にとって日常的な利用が難しい。

    • ラストワンマイルの欠如: 駅から最終目的地(自宅や職場)までの移動手段(歩道、バス、シェアサイクルなど)が未整備で、利便性が低い。

    • 接続の悪さ: 既存の鉄道網や他の交通機関との乗り継ぎが考慮されておらず、シームレスな移動ができない。

  • 「地下鉄への過度な依存」への批判

    • 専門家は、すべての都市に高コストな地下鉄を作るのではなく、バス高速輸送システム(BRT)やライトレール(LRT)など、より安価で柔軟な選択肢を検討すべきだったと指摘している。

  • 今後の展望

    • 地下鉄を「単なる点」ではなく「ネットワーク」として機能させるためには、都市計画全体の見直しや、他の交通機関との統合、そして運賃設定の適正化が急務となっている。

 

街の雑感

インドはもともと一つの文化圏だったところが二つの国に属しているケースがあって、東側のベンガル、西側のパンジャブあたりが代表的だ。ベンガルに属するこの二つのメガシティは異なる点も多いが、言語自体が同じで、気候や食文化は割と共通している。ぜひエビのカレーと、ビリヤニは食べてみてほしい。

4月に行くのはほぼ自殺行為といった感じで、明らかに体温より暑い高温多湿な気候だったので、観光はあまり気が進まなかった。コルカタのハウラー橋とかマーケットの見学は最小限にしたが、メトロの終点にあるダクシネーシュワル寺院は優美な建物で、川沿いのガートで沐浴している姿もあり(Considered the twin of Varanasi by localsらしい)、見応えがあった。
寺院は中に入るのにスマホやらカバンを預ける必要がある。裸足になって中に入るまでにかなり並び、さらに入っても建物の神様を拝むのにまた30分くらい並ぶような感じで、なかなかの人出だった。

Dakhineshwar Temple photo by Knath

地下鉄の終点が最寄り駅で、駅からこの寺院までは歩道橋が真っ直ぐに伸びていて、その橋の中にもびっしり花売りや土産物の店があるのだが、それでも歩道橋は歩きやすく、まあ昔は地面の参道だったのだろうがこっちの方が快適だもんな、とインドの進歩を思う。

コルカタはまあサダルストリートで日本語で声をかけてくるような人に注意しておけば、インドの中では比較的初心者にも優しい街だ、と書いているBlogも見かけた。泊まったところはリトル・バングラデシュの界隈だったらしく、ベンガル料理屋にはバングラデシュのユニフォームを着た人々でいっぱいだった。


ダッカはなかなか高密度な街で、どこも高層の建物が並んでいる。高度経済成長中、という感じだ。初日は地下鉄に乗って空港の北側あたりのウッタラと呼ばれる場所に泊まり、そこから街の中心部を目指したが、バスの行き先がわからずなかなか難儀した。

喧騒と混雑でなかなかタフな環境だが、大都会なので金さえ払えばいくらでも快適な環境はあるようだ。
観光的にはオールドダッカを少し散歩したくらいで、ダッカのテロ事件があったグルシャン地区の洒落たカフェや、空港近くに最近オープンしたCentrepointというショッピングモールで深夜便を待っていた。
夜に一本くらい映画を見ようかなと思ったら、7時ごろですべて上映が終わってしまうらしく空振りになったが、ショッピングモールのフードコートはアフガン料理とかメキシコ料理のビリヤタコス専門店なんかまで入っていて、なかなかのバラエティだった。

ダッカのショッピングモール、フードコート

ダッカの空港は入り口でひどく並んでいて空港に入れないと言う話を聞くが、このショッピングモールで時間を潰し、10分ほど歩いて空港の敷地に入り、最も北側(市内から来たら最も奥にある方)の入り口から入れば特に混雑はなかった。空港自体はターミナル1と2に分かれているが、内部的には一つだ。ターミナル3がほぼ出来上がっているようだったので、数年するとこっちに移るのかもしれない。

ところで、バングラデシュは2024年に学生デモから始まった政変があって、今年の2月には総選挙が行われた。
この間ミャンマーのように内戦にならなかったのは幸いだと思うが、壁や高速道路などにはまだデモの呼びかけなどがペイントされたものが残っていた。
旅行中、一枚だけ2025年発行の新札を手にした。今までこの国のお札はすべて「建国の父」ムジブル・ラフマンが描かれていたが、新札からはこの肖像が消えた。デモにより退陣したハシナ首相はムジブル・ラフマンの娘で、アワミ連盟の指導者を引き継いでいたので、やはりこのイメージは外したかったということなんだろう。それなりに社会が変わったことを思わせてくれる。

上が新札、下が旧札。どちらも使える

インドは看板などに比較的英語が併記されていたが、バングラデシュに入ると駅の表示なんかもベンガル語だけになって、ちょっと困ることもあった。しかしその分困っている外国人には手を差し伸べてくれる人たちも多く、大いに助けられた。
コルカタのインド人は比較的厳しい顔をしている人が多かったが、バングラデシュはなぜか優しい表情のように見えたのが不思議だった。


今回は上海で銀行に寄る用事もあったので、キャセイの香港経由上海便と、春秋航空で帰ってきた。
免税手続きを不便にしたり、JRパスを値上げしたりと、インバウンドにうんざりしている日本に比べ、中国は最近免税のやり方を改善したりと、比較的旅行者を呼び込もうという施策が増えてきている。今回の宿は海外からのお客も結構多いようだった。
上海のローカルな麺と小籠包を食べて、ほっと一息。銀行の窓口はなんと日本語も英語も話す人だった。ありがたいが、そこまで勉強しなきゃいけないのかと、少し遠い目になった。

小籠包と葱油拌麺、21元