EDIFIER W820NB Plus

EDIFIERのヘッドホン、W820NB Plusを買った。
どこかで聞いたメーカーだなあと思ったら、20年ほど前にドスパラで買ったPCスピーカーがこのメーカー製だった。数千円の品物だが「この価格帯の音ではない」とネット上で妙に評判が高く、私も何年か使っていたことを思い出す。コスパが高いメーカーというイメージは変わらないが、今や深圳の株式市場にも上場済みで、日本やアメリカの老舗音響メーカーを買収して高価格帯の製品まで投入しているようだ。

一昔前に(無料アップグレードされた)プレミアムエコノミーで貸し出されるBOSEのノイズキャンセリングヘッドホンを使って以来、一本くらいはノイズキャンセリング機能がついたヘッドホンが欲しいなと思っていたのだが、メキシコの免税範囲の$50以下で探すと、ちょっと微妙な品質のものになってしまう。Anker Soundcore Q30/Q35あたりが買えないかと思いつつ、数年経ってしまった。

私は高音質を追求してDACを買うようなタイプでもないので、今ある環境でどこまで変わるかという感じのキャッチアップができれば十分だ。とはいえ、Macbook Air M1はハイレゾの96kHz/24bitの出力に対応しているし、Pixel 7aはBluetoothのLDACコーデックに対応している。Amazon Musicは無料トライアルでハイレゾ音源が聴けるし、QobuzもTidalもメキシコでは使える。ということで、後継機種W830NBが出て値段も下がったW820NB Plusを$37で買った。


で、実際に聴き比べてみる。
MacのAudio MIDI設定でUSB有線接続96kHz/24bitにセットして、Amazon Musicで音源からヘッドホンまで全て96kHz/24bitと表示される環境では、確かに高音質というか、解像度が高い音のような感じがする。一方、Spotifyの無料版で同じ曲を再生してみると、少し圧縮感が感じられた。

次にPixel 7aでAmazon MusicのハイレゾをUSB接続と、LDACのワイヤレス接続で試してみる。Mac USB有線接続 > Pixel 7a LDAC > Pixel 7a USB接続 の順で音の違いを感じるのだが、無線が有線よりも良い音になるというのはちょっと考えにくく、最初は自分の耳を疑った。
少し調べてみると、AndroidのUSB Audioは内部のミキサーで48kHzにリサンプリングされるらしく、Amazon Music上では96kHz/24bitと表示されているものの、どうも怪しい気がする。一方で無線のLDACは十分な転送幅もあり、96kHz/24bitはサポートしているはずなのだが、こちらも同様Androidのミキサーで48kHzにリサンプリングされているかもしれない。

このAndroid 48kHzリサンプリング問題はPowerAmpやUSB Audio Player PROといった有料アプリで回避するのが一般的らしいが、Tidalのアプリ単体でもいけるようだ。今度はTidalで聴き比べてみると、Mac USB有線接続 ≒ Pixel 7a USB接続 > Pixel 7a LDAC というように聞こえる。ちなみに、Norah JonesのDon't know Whyが192kHz/24bitと44.1kHz/16bitの両方で用意されていたので、Pixel 7a USB接続で両方聞いてみたが、ほぼ違いがわからないレベルだった。


ということで今回の結果では、ロスレスか圧縮が入るかという部分で、例えばMP3とロスレスの違いは多少わかるかもしれないが、同じヘッドホンでCD(44.1kHz/16bit)とハイレゾ(192kHz/24bit)は聞き分けができなかったということになる。
まあそこはヘッドホンに$37じゃなくて$500くらい出した上でUSB-DACに繋いでからだなという気もするが、最終的には無料お試しが終わったらSpotifyに戻るわけで、あまりとやかく言っても仕方がない。
あと、なんだかんだ言ってAppleはデフォルトでもちゃんとしてるんだなあという感じだった。今回はUSB接続で試したので関係ないと思われるが、3.5mmのアナログ端子はM1世代ではやや難があったものの、M2世代では改善されているようだ。

そもそも自分にとって、いい音という定義も状況次第というか、微妙なところだと感じる。日常的には、音質の違いを比べてみようと思って耳を澄まして聴くようなケースはレアだろう。確かにTidalは明らかに音質が良くて、どちらも使えるならTidalを起動すると思うが、ながらで音楽を聴くような状況ではSpotifyで十分なのではないかという気もする。

なお、全体的にヘッドホンは悪くないと思うし、ノイズキャンセリングもひと昔前の高級機くらいのレベルで動作している気はする。ハードウェアや規格は進化し続ける一方で、人間本体が加齢とともに可聴域が狭まっていくというのもそろそろ考慮に入れざるを得ず、複雑なものだなあと思った。