ここ10年の日本の負け方

経産省系のシンクタンクの人が、「なぜ日本は電子部品の分野で競争力を失ったか」という文を載せていた。

voxeu.org

よく「日本の失われた30年」という言い方をされるが、ここ10年くらいの負け方と、バブル後の話は少し別のような気がしている。

iPhoneが大体まさにそのくらい前の商品で、3Gの発売が2008年。初期のころの部品は日本メーカー製が多く、ブランドでは負けたが中身は日本が強いなどという話が語られていた。

その頃既に日本の家電ブランドは海外マーケットで負けていて、ここメキシコでも家電を買おうと思ったらSamsungかLGという感じで、ブランドで負けた印象は10年前くらいから変わらないが、BtoBの電子部品はそこそこやっているんだろうというのが一般的な認識だった気がする。

しかし、この記事にあるように、今やiPhoneも日本メーカー一辺倒の時代は終わっている。

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The value of electronic parts and components exports from Japan, South Korea, and Taiwan

リーマンショックの後、円高で利益が圧迫されて投資ができなくなったことが主因のようだが、問題はその後円安になっても全く回復していないことだ。一方で、同時期に通貨安になった台湾や、日本と通貨トレンドが逆の韓国ではしっかり投資が続き、その結果輸出を大きく伸ばしている。

 

そういえば自動車も、リーマンショックまではアメリカの高級車マーケットをトヨタLexusがしっかり抑えていて、「レクサスとオリーブの木」という本が流行るなど、高級ブランドの代名詞だった頃があった。

motor-fan.jp

しかし、その後はドイツ車が完全に巻き返している。リーマン後にモデルチェンジが遅れたのと、デザインがマーケットとズレていったことが要因として挙げられていたが、こちらもどこか電子部品と同じ匂いを感じる。

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北米高級車市場の動向(レクサス、メルセデスBMW


記事は、中長期的な価値を市況が悪い時もきちんと守ることと、ソニーイメージセンサー村田製作所のセラミックキャパシタのように分野に特化しろという結論だが、これは一般的な話に聞こえる。

企業は合理的選択として投資の中止や凍結を行ったのだろうと思うが、台湾、韓国と比べ、なぜ日本企業が市場のシェアを失う形の選択に多く傾いたのかは、よく分からない。

日本企業は中小企業が一定数あるのに比べ、台湾や韓国は一握りの大手企業が成功して輸出しているから?意思決定がサラリーマンの集団体制だったり、老化しているから?


それにしても、ここまでの差として明確に出てきていて、理由は一般的に言われているような日本企業の問題点に還元して分かったつもりになっていていいのだろうか。

 

「日本が成長できない本当の理由 企業は設備投資をドブに捨てているようなもの」という記事もあった。内需も輸出も、投資して全く儲かっていないという現状があるようだ。

www.newsweekjapan.jp

この記事の結論は、「効果的な設備投資を実現する唯一の手段は、適切な市場メカニズムを通じて、有能な経営者を企業のトップに据えることである。」と言いながら、「結局のところ、日本経済を復活させるカギとなるのは、企業経営という個別の課題解決であり、その原動力となるのは、最終的には国民一人ひとりの経済行動ということになる。」となっている。

悪いのは経営者なのか国民全体の最適化なのかよく分からないが、グラフだけを見ていると、全体として良かれと思ってやっていることが全くうまくいっていない、という感じを強く受けざるを得ない。